とある何人の一言 – ミスターMの大気圏突入 –

ようこそ『とある何人の一言』へ。笑いの観点から社会を正す謎の男、ミスターMが私の個人的な価値観を拠り所に、刺して刺して刺しまくります。

その五、蔓延する偽りのパンク・スピリッツを刺す!

      2014/10/08

そのロックな生きざまから極東のシド・ヴィシャスと称されているとかいないとかでお馴染みの、言論のアナーキストことミスターMです。

今回は、このギグ(というかこのページ)を訪れたCoolなおまえらに、私の燃えるパンクロック魂から放たれる心のバイブレーションを、イカシたロックンロールのビートに乗せてぶちまけたいと思います。よろしくベイビー!

多少、熱が籠もりすぎましたが改めてここで、ロックとアニメソングという対極の音楽的嗜好をもつ私とともに「パンク・スピリッツ」とは何かということを考えてみましょう。パンクについて関心のない方にも理解しやすいよう、具体的なバンドやアーティスト名を引き合いにしての言及は敢えて避けるため、多少抽象的にならざるを得ませんが、もともと言語による音楽の説明には限界があるため、各自で音楽のイメージを働かせつつ読んでください。

半世紀以上におよぶロックンロールの歴史の中で、パンク・ムーブメントの発生は重要なターニングポイントとなっています。パンク誕生までの背景について、当時のシーンをリアルタイムで体感していない私の主観を交えて説明すると、70年代後半は既にロックが一般の認知を得ると同時に産業として消費される時代となっていました。ロックを演奏ないし鑑賞すること。ロックを愛すること。すなわちロックな人間であることが、特別なことではなくなったのです。

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本来のロックとは、マスカルチャーに溶け込めず、不満や孤独感を抱えた若者達が、自分たちの嗜好に合う新しい文化を求めたことから生み出された音楽です。彼らにとってロックとは自分達の主張や思想を世に発信するための数少ないツールだったのです。そのような性格から、ロックは当然のように反社会的なものとして扱われるようになります。しかし、ロックミュージシャンの中からスターが生まれ、世界に広く認められることで、ロックであることが過激で危険とされた時代が終わりました。皮肉にも世界的なロックスターによって、ロックは本来もっていた価値や意義を奪われてしまったのです。

大衆文化に取り込まれると同時に、ロックからその危険性が取り除かれ、結果的に一つの魅力を失うことになりました。このロックの失われた部分を取り戻そうとする動きこそがパンク・ムーブメントです。パンクはシンプルな演奏とストレートなメッセージから成ります。高度な表現技法や過度な装飾を廃し、原始的な初期衝動のままに表現されたロックがパンクなのです。この点から、パンク誕生はロックンロール史における進化というよりもむしろ原点回帰と言えるでしょう。

パンクの基本スタンスは、これまでの伝統や様式を破壊し、自分たちの新しいスタンダードを築きあげることです。ゆえにパンク・ムーブメントが拡大し、大衆の支持を得るようになるとパンクはその役割を終え、意味のうえでのパンクは死に絶えます。巨大な市場を獲得し、ビジネスに組み込まれることにより備わってしまった従来のロックの権威や格式を剥ぎ取るという言わばロック・シーンの掃除屋であったパンクが、逆にシーンの膿と化してしまうのです。このようにパンクは生まれながらにして、短命のうちに滅びゆく定めにありました。

以上のようにパンクを定義すると、パンク・ムーブメント以降に生まれたパンクアーティストは全て、意味としてのパンクを演奏するアーティストとは言えません。パンク誕生の時代の音楽の手法に倣ったアーティストは、従来とは違う表現方法の音楽を生み出すというパンクの姿勢を踏襲していないことになるためです。ここで「音楽的パンク」と「意味的パンク」という相反する二つのパンクが誕生するのです。

理解不能ですか?そうですか…

つまりパンクの精神が宿ったアーティストはパンクロックを演奏することはなく、その逆もまた然りなのです。

補足しておきたいのが、この場では商業的な成果から音楽を評価することはないということです。ランキング上位のアーティストの音楽をそのまま良いと判断することもなく、認知度の低いアンダーグラウンドでマニアックなものが逆に完成度が高いという偏見も持ちません。アーティストに対する周囲の評価は変動することはありますが、作品の魅力自体がそれによって変わることはありえないと考えるためです。ただ私は、確立されたジャンルに属する音楽を用いて、アーティストの個の部分を表現することは非常に難しく、シーンが拡大することでそのシーンの中から魅力ある音楽を生み出しにくくなる傾向にあると考えています。

音楽的パンクは、既に一つのカテゴリーとして扱われているため、数ある音楽ジャンルの中から用意に判別することが出来ます。しかし意味的パンクは明確な枠組みの中で統一することが難しく、ジャンルから選別することは不可能です。私を含めた意味的パンクを嗜好する者にとって、新たな音源を入手することは情報と勘を頼りに多数の中から自分の求めるものを的確に発掘しなければならないため、非常に厄介です。意味的パンクとは新しいもの、音楽的な法則やルールを無視したものを指します。簡単かつ率直に言うと、ヘンな音楽なのです。様式としてカテゴライズされるものではありません。変わっている。おかしい。普通と違うと感じる音楽です。

そしてこの意味的パンクの中にこそ本当のパンク・スピリッツが存在します。パンク誕生当時、その単純さから幼稚な音楽と評され、一部の若者の間だけに理解されたもの。過激で野蛮な男らしさを追求したもの。そして躊躇のない勢いのままに生き急ぐように滅び、既に過去の伝説となってしまったもの。それがリアルパンクです。そして私は、意外な場所に隠された、恐らく世界中で最もパンク・スピリッツを体現していると思われる究極のパンクソングを遂に見つけ出したのです。

その曲とは……

『宇宙刑事ギャバン』です。

これは、にわかには信じ難い事実だと思われますが、歌詞を抜粋することで万人を納得せしめるに充分な説明をすることが出来ます。

男なんだろう ぐずぐずするなよ

胸のエンジンに 火をつけろ

俺はここだぜ 一足お先

光の速さで明日へ ダッシュさ

若さ 若さって何だ 振り向かないことさ

愛って何だ ためらわないことさ

ギャバン あばよ涙 ギャバン よろしく勇気

宇宙刑事 ギャバン

もはや説明の必要もないでしょう。男らしさを全面に押し出し、光の速さで今を生きる。決して過去を振り返らない若さと、未来を躊躇しないパンクへの愛が、がむしゃらなまでに全力疾走する命のエンジンとなるのです。たとえ自らが滅びようとも涙することのない勇気あるパンク・ヒーローの姿を、アニメソング界の重鎮である串田アキラが熱く歌いあげています。

ギャバンは、伝説の番組として現在も語り継がれています。子供番組という若(すぎる)者を対象にした作品である点もパンクと共通です。それのみならずギャバンは、ロックを好み、アニソンを愛する私の二つの音楽的嗜好を繋ぐ大いなる架け橋となるのです。

60年代末のアメリカでその基礎がつくられ、70年代後半のイギリスで産声をあげたパンクは、80年代初頭の日本で完成されたものとなったのです。

現在に至るまで、多くのパンクバンドが生まれては消え、そして今後も新たなパンクアーティストが誕生することでしょう。しかし、他のどのパンクとも一線を画す完成度を誇るのが『宇宙刑事ギャバン』なのです。作品としてのギャバンは既に過去のものとなりましたが、ギャバンが私の魂に灯したパンクの炎は、これからも永遠に燃え続けるのです。

アクセスキーワード

  • パンクスピリット
  • パンクロック 歴史的意義

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