とある何人の一言 – ミスターMの大気圏突入 –

ようこそ『とある何人の一言』へ。笑いの観点から社会を正す謎の男、ミスターMが私の個人的な価値観を拠り所に、刺して刺して刺しまくります。

第一回掲載

      2014/10/08

お初にお目にかかります。私はミスターMと申しまして、アメリカ留学中の友人がつくったホームページに日記やらコラムやらをチョコチョコと書いてる者なんですが、今回は縁あってこちらに載せていただくことになりました。海外で頑張る皆さんを応援しつつも、私自身は日本はおろか出身地である福岡以外の土地に住んだことすらありません。まるで童貞が「結局オンナってヤツはさぁ〜」なんて語りだすかの如く、暗闇の中を手探りで進みつつ皆さんへ熱いメッセージを綴ってゆきますので、何卒ひとつ生暖かく見守ってやってください。

ところで皆さん、ニューヨークでの暮らしは如何なもんですか?日本の生活で慣れ親しんでいた土地や人や文化から切り離され、異質の世界へと単身飛び込むわけですから、引き籠も…いや、保守的な私には海外生活なんて一切の想像もつきません。今回はこんな私の日常の中で遭遇した小さな『異質』の体験についてちょっと書いてみようかと思います。

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先日、美容室なるものに行ってきたんですよ。実は私は高校の頃からずっと自分で髪を切ってきたんです。高校時代の私は小遣いなんかも限られてて床屋に行く金すら勿体ないなんて思ってたんですね。現在はその頃ほど貧乏なわけでもなく、少なくとも散髪代くらいは何とかなるくらいにはなりました。しかしつい先日までの数年間ずっとセルフカットを貫いてきたのは何故かと言うと、まぁアレですよ。周りのチャラチャラした奴らは美容室に行って流行の髪型みたいなのにするでしょ?これが貧乏だからという当初の理由からすり替わってきた要因です。つまり美容室に漂うオシャレな空気が私にはバリアにしか見えなかったんですね。美容室の入り口のドアノブには高圧電流が流れた鉄線が張り巡らされ、注意書きには『お母さんがスーパーで買ってきた服しか持たぬ者入るべからず』みたいな。しかも血文字で…。中にいる客どももカフェテラスでティータイム的なオシャレオーラ丸出しなんですね。パリ・コレクションやらミラノ・コレクションに対して私のガンプラ・コレクションはドコまで通用するのかと言ったトコです。

知人の勧めと親の心配などもあり、せめて普通に外出できる髪型にしてもらえと半ば強制的に予約させられました。予約?私が小学生の時に行ってた床屋では考えられません。これだけでも気軽に行ける空気ではないことがわかります。予約して放り込まれたのは異空間ですよ。美容室に入るや否や「上着をお預かりします」…ッて見るな!俺の上着の首の後ろに付いているタグを見るな!『メイド・イン・聞いたこともない国』て書いてあるのを見るな!初めて入店した客に対して早速ファッションチェックですか。お母さんに買ってもらった上着を毟り取られ、下に着ていたビンテージスウェット、つまりお父さんが若い頃に着てたトレーナーが露わになったわけです。両親から受け継いだ文字通り私の血肉と同等であるオシャレアイテムを晒け出し、個性を全面に押し出した他との差別化は大成功のようです。その証拠に私だけが場違いな異臭を放ちまくっています。S

そして鏡の前の座席に案内され、いよいよ散髪…ではなくカットの開始です。ここで私をイケメンにするべく現れたのは少女漫画に出てくる感じの細身のシルエットとシャープな顔立ちをした男性美容師でした。そんな彼と私の二人が目の前の一つの鏡に映る様は『ときめき!TONIGHT』と『魁!男塾』のキャラが同じコマに登場するかのような不自然さです。

「今日はどんな感じにしますか?」相手の先制攻撃が来ました!エンカウントで現れるドラクエの敵キャラのように突然の奇襲です。同時に私の脳内では戦闘BGMが無限ループです。この相手の攻撃は、私の装備している『おやじのとれーなー』というレベルの低い防具では凌ぐことは出来ません。更に彼は続けざまに、戦闘用道具『へあすたいるかたろぐ』をとりだし、私にアドバイスしはじめるというターン制を無視した連続攻撃に出ました。この二段コンボを浴びた私は状態異常に陥り『こんらん』と『ちんもく』を併発するという大ピンチ。街でオシャレベルを上げておくべきだったと後悔しても後の祭りです。相手からすると『へんじがないただのしかばねのようだ』であった私は最後の力を振り絞るように答えました。

「べ……短くしてください」

我ながら意味がわかりません。カットに来たわけですから短くするのは大前提です。そもそも長くするなんて物理的に不可能です。さらに「べ…」て何でしょう?「ま…まさか!?」とか「バ…バカな!!」ならマンガなんかでよくありますが、「べ…短く」には相手もびっくり周りもびっくり自分もびっくりです。

結局はおまかせということで落ち着き、彼の言う『ラフなスタイル』に仕上げることになりました。カチッとキメるよりトータル的なバランスがとれるとのことです。つまり私はファッションに力を抜きすぎという遠回しな悪口でしょうか。そもそも素人のセルフカットこそ一番ラフではないでしょうか?そんなことを思う私のボサボサ頭にハサミを入れられ、みるみるスッキリと整っていきます。そして完成したのは今更な感じもするベッカムヘアー。いや、確かに頭だけならベッカムなんです。しかし全体を見るとはなわでしかありません。トータル的なバランスという彼の目指したものは、明らかに失敗しています。

床屋の倍以上の金を支払い、お笑いヘアーにされた私は美容室での苦痛と髪型への不満から帰り道で涙を流していました。「笑われたらどうしよう…」でもこんな不安は杞憂だったようです。
だって、あれから一週間ろくに人と会ってませんから。

 - コラム掲載

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